『老舗の流儀 虎屋とエルメス』

『老舗の流儀 虎屋とエルメス

エルメス本社の副社長を日本人が務めていたことを知らない方も多いと思います。

エルメス本社前副社長であった齋藤峰明さんが受けたある雑誌のインタビューにて、ライバルを挙げるならどこかとの問いに対して「強いてあげれば虎屋です。」と答えたことが発端となり実現した対話録。虎屋からは十七代の黒川光博社長。

 

 

 

虎屋はパリに店舗を構えていますが、ようかんを欧米の人に理解してもらうには時間がかかったようです。小豆から作られるあんこに問題あり。というのも

 

”豆からできる料理はしょっぱいもの”

 

というのが向こうの一般認識なのだそう。小豆からできた甘い食べ物は、それだけで抵抗感が強かったようです。日本で和菓子とともに育った僕には全く把握のできなかった認識でしたが、言われてみれば思い当たる節が。りんごやみかんにサラダドレッシングがかかっていると(そういうサラダありますよね)、嫌なんです。あの酸っぱさというか、とにかく”フルーツはこういう味じゃない”という感覚。

 

正直にハッとさせられたのは、虎屋黒川さんの羊羹に対する考え方。

ー羊羹は、チョコレートと同じくらいの可能性があると思うー

わずか2-3行の説明ですが、読むと納得。自分のプロダクトのポテンシャルに自信を持っているのがよくわかる。”あんこなんて洋菓子にはかなわない”と自分は無意識に評価を下げていた僕には出てもこない考え方だったと恥ずかしくなりました。

たしかに、チョコだってカカオ99%のものしかなければ(実はカカオ100%のチョコを作るのは難しい)これだけ流行ることはなかったはずだと思います。「食べるには慣れ。」と黒川さん。逆に慣れてしまえば広まるのは時間の問題なのかもしれないです、その意味で羊羹の少し先を行っているのは日本酒なのかなと思います。ともあれ、虎屋は和菓子で先頭を走っている。

 

虎屋は「トラヤカフェ」というカジュアルなスタイルでも和菓子を広めようと動いています(東京ミッドタウン六本木ヒルズにあります)通ってみるとしっかり賑わっていてなおさら惹かれます。

 

と、ここまで虎屋推し気味ですが、エルメスの齋藤さんの発言にはフランスと日本の考え方やスタンダードの違いが随所に見られて、これもなかなか興味深いです。エルメスが売れたトートバックを5年であえて廃止にした理由も、芯を感じるエピソードでした。

 

拘りや熱く語ってくれるモノって、買いたくなりますよね。エルメスと虎屋。面白かったです。手が届く虎屋の羊羹はさっそく買っちゃいました。