『デザインマネジメント』

『デザインマネジメント』田子學

現在参加している、「始動2018」の課題図書となっており、読んでみた感想を書いてみます。やっぱり書き方に慣れないのですが、まずは自分のポジションをとるという意味でも、残したいのです。

 

sido2018.com

 

l  デザインとは意匠のみならず、総合的な計画・設計を指す。従ってデザインはモノ・サービスの外観に留まらずチーム編成からユーザー接点まで関与する

l  Whyを最初に据え、HowやWhatを優先させない。「このプロジェクト(事業)がなぜ会社に必要なのか」にいつでも立ち返る。ひいては、社会全体の中で自分の会社が何をすべきか考える必要がある

l  デザインの3大要素は「ロジック」「センス」「ラブ」である。ロジックが欠けたものはアート的な完成品になるし、センスガ欠けると技術者主導の極めてシーズ寄りなものになり、ラブが欠けると魂が感じられず最悪のケースとなる

 

〇「デザイン」=創造的計画

デザインとはつまり言えば計画であると述べている。では、普通一般に言われる計画と異なるのはどういう部分か。直観的な共感・右脳と左脳のバランスが取れているかどうかではなかろうか。センス(五感で感じられること)に訴えられないとか、ラブがない場合にデザインはただの計画と化す。

一方、デザインとアートの差異については明確に述べられている。すなわち、デザインとは客観的要件に立脚しており、アートとは主観的なメッセージを伝えようとするものであると。

 

〇「常に五感を刺激する形で進める」

田子學さんの実話において、デザインマネジメント(一連の創造的計画)が社内の協力を得て結果に結びついた要因の一つに進捗の共有方法が挙げられるように感じた。イメージを共有したり、3Dプリンターで実物を見せる・モックを作る、インフォグラフィックスを駆使して直観的に進捗を実感できたりモチベーションを向上させることに成功していると思う。

 

個人的にもこれには思い当たる節がある。社内のある人のことなのだが、その人はいつも具体的なアウトプットを初期段階で見せてくる。新規プロジェクトでも、その人が入った案件は比較的進捗することが多い。その人はいつも具体的な試算を示したエクセルを用意してくる。そして、必ずシナリオ分析も欠かさない。ストラクチャードファイナンスは新規プロジェクトに特にハードルが高いのだが、初期段階ではスキームを一つ考えるか、妥当そうな計算結果が一つあれば終わりにしていることが多い。得てしてこういったケースでは細かい懸念点の指摘や、不確定さ(シナリオ分析をしていないのだからリスク不明というのは当然のことなのだが)を嫌気して案件がとん挫する。ところがその人が関与する案件だと、最終的にはとん挫することがあっても、相当数の投資家に検討を促せていたり、その後の相談が舞い込んできたりしている。この違いはこういった「進捗している感」をどれだけ相手に印象付けることができるかにかかっているのではなかろうか。

 

プロジェクトに関わる人間のベクトルを合わせるには、実感を伴って判断できる「目の前に置かれたもの」いわゆるプロトタイプが何よりも重要なのだ。頭の中で考えたり紙の上の数字を見たりしただけでは、重箱の隅を突くような意見しか出てこない。

 

イノベーションは「足し算・掛け算 → 引き算」

イノベーションの原点とは、日常で目にしている何かと何かをくっつけて、そこに新しい価値や新たな存在意義を見出すことだ。[1]しかしここで筆者が述べている重要なことがある。誤解しないでほしいのは、何でも足し算・掛け算すればよいというものではないということであり(この点はおそらく多くの人がわかっているように思うが)、なるべく多くテーブルに並べたら最も大切なものだけを残して研ぎ澄ませるという、引き算を最後に行う必要があると述べていることだろう。

 

〇プロジェクト成功の秘訣はキーパーソン

また、実例で紹介されたキョーワナスタのnastaプロジェクトの成功の最も重要なポイントとしてプロジェクトを統括する人間が意思決定権を持つ役員だったことだと述べている。この点は落合陽一さんが富士通との対談でも同じようなことに言及しており、うまくいったプロジェクトが多いことを「僕は相手側にキーパーソンがいないところとは組まないからだと思います。」と言っている。[2]

 

 

  • 「なぜ」を突き詰める難しさ

プロジェクトにおいて「なぜ」を突き詰めるのは頭ではわかっていても決して容易ではない。なぜだろうか。一つは、それがものすごい時間を要する行為だからである一方で、日常的に行っている業務においてはそのような時間の余裕がないことが挙げられる。何らかのアウトプットが出るまでに3年かかってよいという状況は決して多くない。従って質よりも形式が優先され、とにかく出す・いいからやるという感覚で仕事が進んでいる。ただ、それでも売れてしまうのが世である。だから大企業が成り立っているのかな。

 

https://www.amazon.co.jp/デザインマネジメント-田子-學-慶應義塾大学大学院特任教授-エムテド代表/dp/4822276295

 

[1] 早稲田大学の入山先生の講義においても、イノベーションを知と知の新しい組み合わせとしきりに説明していた。

[2] FUJITSU JORNAL【落合陽一×富士通】「均質化された自分」から脱皮せよhttp://journal.jp.fujitsu.com/2018/07/02/02/